2017年3月24日金曜日

プレビュー:Phnom Penh Post(2017年3月24日)

Re/Play begs the question: to dance or not to dance? 
By Anna Koo | Fri, 24 March 2017

http://www.phnompenhpost.com/post-weekend/replay-begs-question-dance-or-not-dance

和訳↓
「Re/Playが疑問を投げかける:踊る、踊らない? 」
記者:Anna Koo
翻訳:井手和可子

ステージ上のダンサーたちが様々なポーズで静止し、何人かはうつぶせに倒れている。音楽が始まると、その内の数名はほんのわずかな身振りを見せる一方で、急に大きく躍動感あふれる動きをするダンサーもいる。動かないでいるダンサーもいる。一つ確かなことは、それぞれが自分のダンスを踊っているということだ。

この不調和こそが、演出家の多田淳之介がアムリタ・パフォーミング・アーツとのコラボレーションで、二度目の国際共同製作となる『Re/Play Dance Edit』で強調したかったことだ。この製作は、Department of Performing Artsにおいて今夜と土曜日にカンボジアで初めて上演される。

「[ダンサー同士は]お互いを理解することができない、ということに焦点を当てたかった…しかし、[ダンス全体が]舞台で披露されると、第三者は作品全体の意味を理解できると思う」と多田は語る。

『Re/Play Dance Edit』は、2006年に演劇作品として始まり、その後2011年の東日本大震災を受けて、時間のはかなさに焦点を当てるダンス公演へと進化した。その後、『Re/Play』は日本で二度上演され、シンガポールの劇団「シアターワークス」とのコラボレーションで初の国際共同製作としてシンガポールで上演された。

演劇とダンスの要素を融合したところに、『Re/Play』は公演として際立っている。通常、舞台俳優は特定の役を演じるが、ダンサーは身体の動きを使って抽象、具象なコンセプトを表現する。「演劇では孤独な人間を表現できる。しかしダンスでは、孤独そのものを表現できる」と多田は言う。

多田は、彼の言う「踊る/踊らない」というコンセプトを生み出した。「踊らない」を人間として存在する状態であれば、それの対極にある「踊る」は人間性を超越したものを表現するのだと考える。このコンセプトは、カンボジア版『Re/Play』の鍵をなる。多田は演出家として、日本とカンボジアのダンサーたちに踊るか、踊らないという指示しか出さず、ダンサーたちにそれぞれの動きを自由に振り付けさせている。

このコンセプトの結果、舞台上では混沌としたダンスが披露されるのだが、アムリタのアーティストらはクメール伝統舞踊にも精通しているため、時には伝統舞踊に似た調和した動きも見せるのも、観客にとっての見どころとなる。

アムリタの芸術監督で出演者としても参加しているチェイ・チャンケトヤは、このクリエーションのアプローチはいつもの方法と全く異なるため、カンボジアのダンサー全員にとってフラストレーションとの戦いだという。「ダンサーでありながら、踊らないというのはとてもチャレンジングなこと。カンボジア[のダンサーたち]は “踊らせてくれないならいっそのこと殺してちょうだい”と言ってます」。

多田によれば、ダンサーたちに静止するよう指示することは、精神的にも負担になるという。身体をより意識するようになり、その延長線上で自分たちのダンスも意識する。「ダンサーは “自分にとってダンスとは何なのか?”と考える。ダイナミックな動きなのか、小さな動きなのか?」と多田は言う。

2012年から主要メンバーとしてプロジェクトに参加してきた振付家のきたまりは、この緊張により、『Re/Play』の公演を重ねるごとに自身のアートが変化し、以前は創作的に行き詰まっていた時期からも抜け出せたと言う。

新たな視点を持つことができる、このことこそがコラボレーションを通して一番勉強になったとチャンケトヤは言う。ダンサーたちそれぞれがダンスの習慣、姿勢や考え方を問い直し、さらには広い視野で人と人の相互作用について考えることができたのだと言う。

「宗教や政治信念、文化的習慣をすべて取っ払い[ダンスを通して人間性を表現する]アプローチは…人と人がお互いに交流することを阻むものは何もないという意味。政治や経済は物事を裂いて境界を築こうとするが、アートには広がりがあり、どこへでも導いてくれる」のだと彼女は言う。

カンボジア–日本版の『Re/Play Dance Edit』は、今夜及び土曜の夜7時からDepartment of Performing Artsにて上演される。チケットは当日券大人$5、学生$2.50。

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